近年、BtoBマーケティングの分野で注目を集めているのがABM(アカウントベースドマーケティング)です。ABMという言葉は聞いたことはあるけど、詳しくはわからないという方もいるかもしれません。
この記事では、ABMの基本知識から導入のメリット、効果的なツールまでを詳しく解説します。
目次
ABMの基礎知識
ABMとはどのような手法なのか、詳しくご存じでない方もいるでしょう。ここではABMの基本的な内容を解説します。
ABMとは?
ABM(Account-Based Marketing)とは、特定の企業をターゲットに個別最適化されたアプローチを行い、売上拡大を目指すBtoBマーケティング手法です。
従来の広範なリード獲得とは異なり、特定の企業に焦点を当て、カスタマイズされたマーケティング活動を展開します。この手法により、ターゲット企業との関係性を深め、高いROIを実現します。
ABMの注目理由
なぜABMが注目されるようになったのか、その背景として「テクノロジーの進歩」「コロナ禍による営業活動の変化」の2つがあげられます。
テクノロジーの進歩
マーケティングオートメーション(MA)やCRM(顧客関係管理)ツールの進化によってデータ収集と分析が容易になり、パーソナライズされたアプローチが可能になりました。このことによって、ABMの効果が一層高まっています。
ABMに特化されたツールでは、CRMと統合されてターゲットアカウントの情報を一元管理し、より効果的なマーケティング施策が実行できるようになっています。
コロナ禍による営業活動の変化
コロナ禍では外出制限もあり、従来の対面営業が難しくなりました。そのため、リモートワークが普及し、デジタルチャネルを活用したABMの重要性が増すことになります。
デジタルツールを活用して、リモート環境においてもターゲット企業に対するパーソナライズされたアプローチが可能です。リモートワークが広がり、顧客と効果的にコミュニケーションを取るために、ABMは強力な手法として注目されています。
従来のマーケティングとの違い
ABMは従来のマーケティングとどのような違いがあるでしょうか。ここでは、デマンドジェネレーションやリード・ベース・マーケティンとの違いについて解説します。
ABMとデマンドジェネレーションの違い
デマンドジェネレーションとは、企業が抱えている潜在的な「デマンド(需要)」を掘り起こす営業活動です。
デマンドジェネレーションは広範囲にリードを集める手法で、網を広げて多くの魚を捕る「投網」に似ています。一方、ABMは特定の企業をターゲットにし、個別にアプローチする「モリ獲り」のような手法です。
デマンドジェネレーションは、多くのリードを獲得し、その中から見込み客を育成するのに対し、ABMは最初からターゲットを絞り込み、特定のアカウントに対して深く掘り下げたアプローチを行います。
ABMとリード・ベースド・マーケティングの違い
リード・ベースド・マーケティングは見込み顧客(リード)を中心にマーケティングを展開する手法です。多くのリードを集め、その中から成約に至る顧客を育成します。
一方、ABMでは初めから特定の企業に焦点を当て、その企業の課題やニーズに合わせたパーソナライズされたマーケティングを展開します。ABMは企業全体を対象にするため、より戦略的でカスタマイズされたアプローチが必要です。
ABMとMA(マーケティングオートメーション)の関係性
ABMはMAツールを活用することで、データに基づいた精度の高いマーケティングが可能になります。MAツールはリードの管理・育成に役立ち、ABMの効果を最大限に引き出します。
MAツールを使ってターゲット企業の行動データを収集し、そのデータを基にパーソナライズされたコンテンツを提供することで、ターゲット企業とのエンゲージメントを高められます。
ABMが向いている企業とは?
ABMが効果的な企業の特徴
ABMは、大規模な取引を行うエンタープライズ企業や、複雑な意思決定プロセスを持つ企業に対して特に有効です。これらの企業に対するアプローチでは特定のアカウントに集中することで、より高い成果を得られます。
この時、今後期待できる取引額、リピート率を考慮し、なるべく高いLTV(顧客生涯価値)が見込める企業をターゲットにすることが重要です。
ABMの導入メリット・デメリット
ABMを導入することには多くのメリットがありますが、一方デメリットになることもあります。ABMのメリットとデメリットの両方を理解しておくことが重要です。
ABMのメリット
ABMには、以下のようなメリットがあります。
ROIの向上
ABMは、特定の企業に焦点を当てることで、リソースの無駄を減らし、投資対効果を高めます。広告費やマーケティングリソースを重点アカウントに集中させることで、より高いROIを実現可能です。
リソースの無駄を減らせる
ターゲットを絞ることで、無駄なリソースの消費を抑え、効率的なマーケティングが可能です。特に、マーケティングキャンペーンの効果を高めるために、特定のアカウントに対するカスタマイズされたアプローチを実施すると、高いコストパフォーマンスが期待できます。
PDCAを高速で回せる
ABMは、ターゲット企業に対する迅速なフィードバックと改善が容易で、PDCAサイクルを高速で回すことが可能です。例えば、ターゲット企業の反応をリアルタイムでモニタリングし、必要に応じてアプローチを迅速に修正できます。
営業とマーケティングの連携ができる
ABMは、営業とマーケティング部門の連携を促進し、一貫した戦略の実行を可能にします。例えば、営業チームとマーケティングチームが共同でターゲットアカウントの戦略を策定し、実行することで、より効果的な結果を得られるようになります。
ABMのデメリット
ABMはメリットだけでなく、デメリットもあるので確認しておきましょう。
導入に時間がかかる
ABMの導入には、ターゲット企業の選定や戦略の策定など、時間と労力が必要です。特に、ターゲット企業の詳細な情報収集や、パーソナライズされたアプローチの設計には時間がかかります。
全ての企業にとって効果的なわけではない
ABMは、全ての企業に適用できるわけではなく、特定の業界や企業規模に依存します。小規模な企業や、短期間での結果を求める企業にとっては、ABMは適していない場合が多いでしょう。
ABMの導入ステップ
ここでは、ABMの導入手順について7つのステップに分けて説明していきます。
STEP1:事業目標から逆算し、ABM導入が必要か判断する
まず、自社の事業目標を明確にし、それに基づいてABMの必要性を評価します。例えば、特定の業界でのシェア拡大を目指す場合や、特定の大口顧客との関係強化を図る場合に、ABMが適しているかを判断します。
STEP2:ABMチームを作る
次に、ABMを実行するための専任チームを編成します。その際には営業とマーケティングの連携が重要です。ABMチームは、ターゲットアカウントの選定、アプローチ戦略の策定、実行の各段階で協力し合う必要があります。
効果的なABMを実施するには、営業とマーケティングの深い協力が不可欠です。
STEP3:アカウントリストを作る
ターゲット企業のリストを作成し、アカウントごとにアプローチ戦略を練ります。リストの作成には、自社のCRMシステムを活用し、過去の取引データや市場調査の結果を基に、最も有望なアカウントを特定します。
アカウントリストは定期的に見直し、必要に応じて更新する必要があります。
STEP4:意思決定者やキーパーソンを見つける
ターゲット企業の意思決定者やキーパーソンを特定し、彼らに対する具体的なアプローチを計画します。これは、企業の組織図を調査し、各部門のキーパーソンを特定することから始まります。
LinkedInなどのソーシャルメディアツールを利用して、キーパーソンとの接点を増やすことも有効です。
STEP5:届けるコンテンツやメッセージを決める
ターゲット企業に対して、適切なコンテンツやメッセージを用意します。コンテンツは、ターゲット企業の課題やニーズに合わせたものである必要があります。
ホワイトペーパー、ケーススタディ、ウェビナーなど、様々な形式のコンテンツを用意し、ターゲット企業にパーソナライズされた情報を提供します。
STEP6:チャネルや施策を考える
メール、SNS、セミナーなど、最適なチャネルを選定し、具体的な施策を計画します。チャネルの選定は、ターゲット企業の特性やキーパーソンの行動パターンに基づき決定するとよいでしょう。
STEP7:施策の実施と効果検証を行う
計画した施策を実施し、その効果を定期的に検証し、改善を行います。効果検証には、マーケティングオートメーションツールやCRMシステムを活用し、各施策のパフォーマンスを詳細に分析します。PDCAサイクルを高速で回すことが、ABMの成功には欠かせません。
ABMの手法と進め方
ここでは、ABMの手法と具体的な進め方について解説します。
ターゲット・アカウントの選定
ターゲット企業を選定し、それぞれに最適なアプローチを設計します。選定基準となるのは、企業規模、業界、過去の取引履歴などです。リストに上がった企業は、さらに詳細な調査を行い、最も有望なアカウントに絞り込みます。
アプローチ戦略の策定
ターゲット企業ごとに具体的なアプローチ戦略を策定し、実行に移します。戦略には、ターゲット企業のニーズや課題に応じたパーソナライズされたメッセージやコンテンツが含まれます。ターゲット企業とのエンゲージメントを深めることが狙いです。
施策の実施~効果測定・改善
実施した施策の効果を測定し、必要に応じて戦略を改善します。効果測定には、KPI(主要業績評価指標)を設定し、定期的にレビューを行うとよいでしょう。
ABM推進に役立つツール
テクノロジーの発展に伴い、ABM推進に役立つさまざまなツールが現れています。ここではフェーズごとに活用できるツールを紹介します。
ABMで活用できるツールの種類
リード獲得~育成フェーズ
マーケティング・オートメーション(MA)ツールを使用して、リードの管理と育成を行います。MAツールは、ターゲットアカウントに対するメールキャンペーンやウェビナーの管理に役立ちます。
MAツール(マーケティング・オートメーション)
CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)ツールを活用して、商談の進行をサポートします。これらのツールは、ターゲットアカウントの情報を一元管理し、営業プロセスの効率化を図ります。
商談フェーズ
商談フェーズではCRM/SFAツールを活用します。
CRM / SFAツール
CRM / SFAツールは、顧客の連絡先情報、過去の取引履歴、コミュニケーション履歴を記録・管理し、次のアクションを計画するのに役立ちます。顧客のニーズを的確に把握し、パーソナライズされた提案やフォローアップに活用できるツールです。
顧客維持フェーズ
名刺管理ツールやABMツールを使用して、顧客関係の維持と強化を図ります。これらのツールによって、ターゲットアカウントとの長期的な関係構築が可能です。
名刺管理ツール
名刺情報をCRMやSFAツールと連携させることで、顧客の最新情報を常に把握し、適切なタイミングでのフォローアップや提案が可能になります。
ABMツール
ABMツールを活用することによって、顧客の行動データや過去のインタラクションを基に、顧客が求めている情報やサービスをタイムリーに提供できます。
例えば、顧客が新しい製品に関心を示した場合、その製品に関する詳しい情報や特典を自動的に提供できます。
また、ABMツールは、顧客の利用状況や満足度をモニタリングし、プロアクティブにフォローアップを行うことで、顧客ロイヤルティを向上させる役割を果たします。
成功に導くポイント
顧客データの正しい管理と分析
正確な顧客データの管理と分析が、ABMの成功には不可欠です。CRMやSFAツールを活用して、顧客の連絡先情報、取引履歴、コミュニケーション履歴などを体系的に収集・更新することが含まれます。
そのうえでデータドリブンなアプローチで、効果的な戦略を策定します。顧客データは、定期的に更新し、最新の情報を反映させることが重要です。
よくある質問とその回答
ABMについて、よくある質問とその回答をまとめました。
BtoBマーケティングで成果を上げる方法
BtoBマーケティングで成果を上げるためには、以下のポイントが重要です。まず、ターゲット企業を絞り込み、その企業のニーズや課題を深く理解することが不可欠です。
次に、パーソナライズされたコンテンツやメッセージを提供し、適切なタイミングでアプローチすることが求められます。
さらに、マーケティングと営業が連携し、一貫した戦略を実行することで、見込み客から成約に至るまでのプロセスを効率化できます。
ABMに取り組むメリット
ABMに取り組むことには多くのメリットがあります。まず、特定の高価値なアカウントに集中することで、リソースの無駄を減らし、ROIを向上させることができます。
また、ターゲット企業に対するアプローチがパーソナライズされているため、関係性を深めやすく、長期的な取引につながりやすくなります。
さらに、営業とマーケティングの連携が強化され、一貫したメッセージを届けることが可能となります。
ABMの注意点
ABMを導入する際には、いくつかの注意点があります。まず、導入には時間とリソースが必要であり、短期間で成果を期待することは難しいです。
また、全ての企業に対して効果的であるわけではなく、自社のビジネスモデルやターゲット市場に適しているかを事前に検討することが重要です。
さらに、ABMは細かなデータ分析やターゲティングが求められるため、精度の高いデータ管理と分析能力が必要です。
まとめ 自社の戦略に合わせたアプローチとツールの選定
ABMは、特定の企業に焦点を当てた効果的なマーケティング手法です。さまざまなメリットがありますが、全ての企業に当てはまる手法ではありません。自社で活用できるかを十分検討してみてください。
ABMを導入する際には、自社の戦略に合ったアプローチとツールを選ぶことで、ABMの効果を最大化し、顧客との関係を深めて持続的な成果が得られるようになります。
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