営業活動を展開していく上で、受注率は非常に気になる指標となる数字です。受注率を向上させて営業業務を効率化し、受注件数を増やしていくためにどうすればいいのか、という課題を抱えている企業担当者も多いでしょう。
本記事では、受注率を高めるための基本的な考え方や、具体的な方法、さらには効果的な商談テクニックについて詳しく解説します。
目次
1. 受注率の基礎知識
受注率とはどのような指標か、ここで改めて確認しておきましょう。
受注率の定義と計算方法
受注率とは、商談を行った件数のうち成約に至った割合を示した数値のことです。
受注率は成約に至った割合を示すものでもあるので、成約率ともいわれます。
受注率を示す際には、金額で計算する場合と件数で計算する場合の2つのパターンがあります。受注率を算出する計算式は下記のとおりです。
受注率=成約に至った商談の総額(件数) ÷ 商談の総額(件数)×100
成約率の目安と重要性
成約率の目安となる数字は、業界や製品の特性によって異なるため、一概に示すことはできません。安直に設定してしまうと、実際の状況を正確に把握できなくなる可能性があります。成約率の目安を設定するには、長期間にわたり自社のデータを収集して平均値を導き出すことが不可欠です。
成約率は、いかに営業活動が効率的に行われているかを示しており、営業を向上させようとする場合に大きなカギとなる数字です。無駄な商談をなるべく減らし、商談を行う場合には確実に成約につなげるように変えていかなければなりません。
また、受注率は営業組織全体のものと、営業担当者ごとのものがあります。組織全体の受注率が高くても、担当者ごとに大きく差がある場合は改善が必要です。
2. 受注率が低下する主な要因
受注率が低下する要因を把握し、それを改善することが営業活動の鍵となります。以下に、よく見られる原因をあげてみましょう。
BANTを意識していない
BANTとは、営業活動で顧客の本質的なニーズを理解するためのフレームワークです。「Budget(予算)」「Authority(決済権)」「Needs(ニーズ・需要)」「Time frame(導入時期)」の頭文字をとった略称で、これらを意識していないと、商談が失敗に終わる可能性があります。
例えば、予算がない顧客に高額な商品を提案したり、決裁権を持たない担当者に説明をしたりしても、成約には結びつきにくいです。
商談を行う際にはBANTを意識することで、顧客に最適な提案を行い、商談をスムーズに進められるようになります。
受注確度の低い案件へのアプローチ
受注の可能性が低い案件に多くの時間やリソースを費やすと、結果的に重要な案件への対応が不十分になってしまうことがあります。受注確度が低い案件に関しては、時間をかけすぎないようにし、より確度の高い案件に集中することが大切です。
商談の初期段階で受注の可能性を判断し、優先順位を明確にしましょう。
決策者以外へのアプローチ
商談を進める相手が決裁権を持たない場合、どれだけ提案をしても成約に結びつく可能性は低いです。決裁権を持つ人と直接やり取りをすることで、意思決定のプロセスを短縮し、成約につなげることができます。
商談の相手を見極め、決裁権のある相手と商談するように話を進めましょう。
自社都合の押し付けとニーズ無視
自社の製品を売り込みたいという思いが強すぎると、顧客のニーズを無視してしまうことがあります。顧客が求めているものに応える姿勢がなければ、商談は失敗に終わる可能性が高くなります。
常に顧客の視点に立ち、彼らのニーズを満たす提案を心がけるようにしましょう。
業務効率の悪さ
営業活動全般における業務効率の悪さも受注率を下げる要因の一つです。無駄な手順や不必要なタスクが多いと、商談の質を下げ、顧客対応のスピードが落ちます。営業プロセスの見直しやツールの活用を検討し、効率的な業務運営を目指すことが求められます。
日々の業務における時間管理を徹底し、業務フローを最適化することが重要です。
3. 受注率向上のための10の方法
受注率を高めるための具体的な手法について、具体的な10の方法を以下に紹介します。
1.目標を的確に設定する
明確な目標を持つことは、営業活動の方向性を定めるための第一歩です。売上目標や見込み顧客の獲得数など、具体的な数字を設定し、その達成に向けた計画を立てましょう。目標が曖昧だと、営業活動全体が不明確になりがちです。
最終的な売上目標を達成するためには、営業プロセスごとの目標を細かく設定し、その細かな目標をひとつずつクリアしていくと成果につながりやすいです。途中の段階でもどこで躓いているかが把握しやすいので、チームの管理もしやすくなります。
2.商品理解を深める
自社の製品やサービスについて、深く理解することは不可欠です。競合他社と比べてどこが優れているのか、顧客にどのような価値を提供できるのかを明確にすることで、より説得力のある提案が可能になります。
さらに商品理解が高まれば、どのような顧客にどの点をアピールすれば響くのかがわかるので、成約率が一段と高まるでしょう。
3.顧客情報を整理する
顧客情報の整理は、営業活動を効率化するための基本です。CRMなどのツールを活用して顧客の基本情報や過去の接触履歴を管理することで、より効果的なアプローチが可能になります。顧客情報を整理することで、各顧客に合わせた個別の提案ができ、商談の成功につながります。
4.見込み顧客を段階に分類する
見込み顧客への対応は見込みの段階で分類することで、効果的なアプローチが可能です。例えば、購買意欲が高く購入タイミングが近い顧客には優先的にアプローチし、興味は多少あるけれどもまだタイミングが先だと思われる顧客には情報提供を行いながらフォローアップを続ける、といったように見込みの度合いに応じて対応すると良いでしょう。
顧客の購買プロセスを理解し、それに応じたアプローチを取ることで、成約の可能性を高められます。
5.信頼関係を築く
顧客との信頼関係は、商談を成功に導くための大切なカギです。誠実な対応とコミュニケーションを心がけることで、長期的な関係構築が可能になります。顧客の話に耳を傾け、期待に応える行動を続けることで、信頼を得られます。
顧客のニーズや課題を聞き出す前に、しっかりとした信頼関係を作り上げるように心がけましょう。
6.課題のヒアリングに力を入れる
顧客の課題を正確に把握することは、適切な提案を行うために必要です。しっかりとヒアリングを行い、顧客が抱える問題を理解することで、より効果的なソリューションを提案することができます。
顧客のニーズを聞き出すためには、信頼関係をしっかりと築き、深いところまで話せる状況を作ることが重要です。
7.断られることを想定しておく
営業活動では、すべてが成約するわけではありません。断られるケースの方が多いのです。あらかじめ断られた場合のことを想定しておきましょう。
断られてもそこで関係が切れてしまうのではなく、関係を維持できれば後に契約につながる可能性があります。
8.直接営業は重要度の高いものに絞る
全ての案件に時間をかけるのではなく、重要度の高い案件に集中することで、営業効率を向上させられます。優先順位を明確にし、リソースを効果的に配分することが重要です。そのためには、見込み客の度合いやBANTをしっかり把握しておくようにしましょう。
9.価格とスケジュールを明確にする
価格や導入スケジュールを明確にすることで、顧客に安心感を与えます。価格についての不透明さが残ると、顧客の意思決定を遅らせる原因となります。しっかりと説明し、納得感を得るようにしましょう。
また、納品のスケジュールや納品後のサポートなどを詳しく説明することで顧客の納得感が高まります。
10.提案は問題解決を意識する
提案の際には、単に商品を売ることばかりを考えるのではなく、顧客の問題解決に焦点を当てることが大切です。顧客が直面している課題を理解し、それに対する解決策として自社の商品やサービスを位置づけることで、説得力のある提案ができます。顧客の立場に立ち、彼らの問題を解決するためのパートナーとしての姿勢を示すことで、商談の成功につながります。
4. 受注率を上げる商談テクニック
営業トークの展開の仕方にはよく知られた商談テクニックがあります。ここでは受注率向上に役立つ手法をいくつか紹介します。
複数のプラン提案
顧客に複数の選択肢を提示することで、彼らが最適な選択をしやすくなります。その際によく使われるのが「松・竹・梅」の3パターンを提案する手法です。通したい提案と、その上位版と下位版の3つをセットにします。人間の心理として3つあると中間を選ぶ傾向があるので、3つの中から「竹」を選ぶように商談を進めると話が進みやすいでしょう。
1つの提案ですんなり通らないと思われる場合には、複数のプランを用意して商談に臨む必要があります。
ミラーリング・バックトラッキング
人は自分と同じタイプの人に対して好感を持つといわれています。顧客の行動や言動をさりげなく模倣することで、親近感を高めることができます。また、顧客の言葉を繰り返して共感を伝えると、話を引き出しやすくなります。
ただし、このテクニックを使っていることを相手に気づかれると、気を悪くするかもしれません。
相手に気づかれないようにミラーリングやバックトラッキングのテクニックを上手に使うことで、商談の雰囲気を和やかにし、顧客との関係を深めることができます。
ドア・イン・ザ・フェイス法
商談で提案をする際には、断られるのを前提とした大きな提案から始め、その次に本来通したい提案を行うと顧客に受け入れられやすくなります。万が一その提案も通らなかった場合のために、もう一段階落とした提案も用意しておくと失注のリスクも減らせます。
こうしたドア・イン・ザ・フェイス法を活用することで、商談の場での交渉力を高められるでしょう。
テストクロージング
商談の途中で顧客の意向を確認し、成約の可能性を探ります。テストクロージングに対する顧客の反応を見ながら、柔軟に提案内容を調整できます。
テストクロージングは顧客の本音を引き出し、商談をより効果的に進める有効な手法です。
ゴールデンサイレンス
あえて沈黙を作ることで顧客に考える時間を与え、自然な回答を引き出すことができます。沈黙は相手に圧力をかけるのではなく、考える余裕を与える効果があります。
ゴールデンサイレンスを適切に使うことで、商談の流れをスムーズにし、顧客の本音を引き出す手法です。
5. 受注率向上のためのツールとその活用
営業活動を効率化し、受注率を向上させるためにはツールを導入することも効果的です。ここでは受注率の向上に役立つツールを紹介します。
CRM(顧客関係管理)の活用
CRMとは「Customer Relationship Management」の頭文字をとった顧客との関係を管理するITツールです。
CRMを活用することで、顧客に関するあらゆる情報を一元管理し効率的な営業活動を行うことが可能になります。
また、CRMの導入によって営業プロセスが標準化され、属人的な営業活動を改善できます。
SFA(営業支援システム)の導入
SFAとは「Sales Force Automation」の頭文字をとったツールのことで、営業プロセスを可視化し管理するためのシステムです。
顧客管理や案件の進捗管理だけでなく、営業担当者の行動管理や予実管理を一括で行えるツールです。
SFAの導入によって営業活動の効率が向上し、商談の進捗を正確に把握できます。
MA(マーケティングオートメーション)の活用
MAはマーケティング活動の一部を自動化するツールです。具体的には、顧客リスト作成や顧客の見込み度合いに合わせたメール送信、顧客の自動分類といった機能があります。
MAを活用することで、見込み顧客のフォローアップを自動化し、効果的なマーケティング活動を行えます。MAは、リードの育成や顧客の購買意欲を高めるために有効なツールです。
6. 組織体制の見直しと業務効率化
受注率向上には、組織体制の見直しも有効です。営業活動をすべて担当者任せにするのではなく、営業プロセスごとに分業化した組織にすることで、営業パーソンは営業に専念できるようになります。
マーケティング部署の構築
マーケティング部門を強化することで、営業活動を効果的に支援できます。特に近年ではWebの活用が欠かせません。
さまざまな手法を活用して戦略的に見込み客を集め、営業部門に引き渡す仕組みが構築できれば営業活動が効率化し、成約率の向上も見込めるでしょう。
インサイドセールス部署の設立
インサイドセールス部署を立ち上げることで、リードの獲得と育成を効率化できます。インサイドセールスチームが見込み顧客との接触を行い、商談の質を高めるサポートをすることで、営業パーソンは商談に集中できる体制になります。
7. まとめ
かつてはひたすら数をこなして成果を出す「数打ちゃ当たる」式の営業が主流でしたが、営業にも効率化が求められるようになっています。
限られた経営資源で目標を達成するためには、受注率の向上は大きなテーマです。自社で取り組むべきポイントを見つけだして、改善を進めていきましょう。
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