営業資料は、商談の成否を大きく左右する重要なツールです。顧客に自社の製品やサービスを効果的に伝え、成果をあげるためには、資料の質を常に向上させることが不可欠です。
本記事では、営業資料について、具体的な改善の方法とプロセスについて解説します。
目次
1.効果的な営業資料の必須項目と作り方
営業資料を作成する際には、顧客にとってわかりやすく、かつ説得力のある内容に仕上げることが不可欠です。以下に、効果的な営業資料を作成するために必要な基本的要素を解説します。
スライド1メッセージの原則
「1スライド1メッセージ」の原則は、営業資料作成において最も重要なポイントの一つです。各スライドでは1つのメッセージに絞り、ポイントを明確に伝えましょう。
多くの情報を一度に詰め込むと、何が言いたいのかがぼやけてしまい、相手を混乱させることにつながります。
スライドごとに1つのメッセージに焦点を絞ると、言いたいことが明確になり、プレゼンテーション全体がスムーズに進行します。
フォントサイズやカラーの統一
フォントサイズやカラーの統一は、資料全体に一貫性を持たせ、プロフェッショナルな印象を与えるために欠かせません。
スライドによって異なるフォントやカラーが統一感なく使われていると、資料が雑然とした印象を与えてしまい、伝えたいメッセージが十分に届きません。そのため、資料全体で統一感のあるデザインを心がけることが重要です。
見出しや本文のフォントサイズは、あらかじめ決めておくと読みやすくなります。
使用する数色は3色以内にとどめ、通常のテキストには黒色やグレー、強調したい箇所には赤色を用いるなどして、重要度が一目でわかるように心がけましょう。
営業資料に必要な項目
効果的な営業資料には、顧客が求める情報を過不足なく提供することが不可欠です。ここでは、営業資料に必須の項目を詳しく説明します。
表紙・会社紹介
営業資料の表紙は、顧客が最初に目にする部分であり、資料全体の印象を決定づける重要な要素です。
表紙には、資料の主旨を明確に示すタイトルや、会社名、ロゴを配置し、プロフェッショナルな第一印象を与えると効果的です。自社のブランドをイメージさせるブランドカラーやロゴマーク、イメージ画像を使用するのも良いでしょう。
解決したい課題の明確化
顧客が営業資料に期待する最も重要な要素は、彼らが直面している課題に対する具体的な解決策の提示です。ヒアリングから課題を明確にし、なぜ現状では解決できずにいるのかをわかりやすくまとめておきましょう。
そして、その課題に対して自社の製品やサービスがどのように貢献できるのかを具体的に提示します。
その際に、「こんな課題があるだろう」という思い込みで営業資料を作成すると、はずしてしまう可能性もあるので注意が必要です。事前の十分なリサーチとヒアリングが欠かせません。
製品・サービスの概要と強み
製品やサービスの概要と強みを明確に伝えるためには、まず「誰に向けたどのようなサービスなのか」を明記する必要があります。これによって顧客は自分に適したサービスであるかどうかを即座に判断できます。
製品やサービスの紹介では、写真や画像を効果的に使用し、全体像をイメージできるようにしましょう。視覚的な要素が加わることで、顧客は製品やサービスの具体的なイメージを持ちやすくなります。
そのうえで、自社の商品やサービスが顧客のビジネスにどのようにプラスになるかを具体的に示すことが重要です。他社製品との違いや、自社製品が持つ独自の強みを明確にすることで、顧客に対する説得力が一層高まります。視覚的な要素を活用し、グラフや画像、チャートを効果的に使うことで、顧客が製品やサービスの特徴を理解しやすくなります。
また、仕様や機能、性能については、専門用語や社内用語を避け、誰にでも理解できる言葉で説明するよう心がけましょう。
導入事例と効果の提示
顧客に自社製品やサービスの信頼性を示すためには、具体的な導入事例とその効果を提示することが極めて効果的です。
その際に、導入前後の数値をグラフ化して比較すると、製品やサービスの効果を視覚的に示すことができます。そして、なぜ解決できるのかについて、課題解決のプロセスが具体的に記載されていると、さらに提案の信ぴょう性が高まるので有効です。
また、導入企業の声や成功事例を紹介することで、顧客は自社に導入する際の参考として活用できます。事例によって、顧客は自社にとっての導入メリットを具体的にイメージしやすくなります。
料金や費用の明示
料金や費用のページでは、導入や利用にかかるコストを明確に伝えます。料金体系として、「初期費用」や「ランニング費用」など、どのような費用が発生するのかをわかりやすく分類し、具体的な金額を提示します。
もし毎回見積もりが必要で金額が変動する場合は、モデルケースの費用感を提示すると、予算に合わない商談を未然に防ぐことができます。さらに、見積もりに必要な項目を事前に提示することで、顧客とのやり取りがスムーズに進みます。
2.営業資料改善の重要性とプロセス
営業資料を改善するには、以下の4つのステップを順に進めていきます。
- 顧客からのフィードバックを得る
- サービス説明のシナリオを見直す
- 資料の構成を見直す
- デザインを見直す
これらのプロセスを通じて、顧客視点での課題を明確にして資料のシナリオと構成を最適化し、デザインでわかりやすさを強化します。
各ステップについては、以下で詳しく解説します。
顧客からのフィードバックを得る
なぜ顧客からフィードバックを得る必要があるのかという理由を紹介し、どのようにフィードバックを得るのか具体的な方法を解説します。
なぜ顧客フィードバックが重要なのか
営業資料は、通常、サービス開発者や事業の責任者など、その商材に最も詳しいメンバーが監修して作成されることが多いです。こうしたメンバーは、商材の強みや特徴を十分に理解しているため、商材の魅力を網羅的に伝えることが可能です。
しかし、ここで問題となるのが「顧客にとってのわかりやすさ」や「顧客が求める情報の充実度」です。商材に精通しているがゆえに、伝えたいことに偏りが生じ、結果として顧客が本当に知りたい情報から外れた内容の資料になることがよくあります。
しかし、資料を読むのは最終的に顧客です。そのため、まずは顧客からフィードバックを得て、資料が顧客の視点に立った内容になっているか確認することが非常に重要です。
フィードバックを得る方法
顧客から効果的なフィードバックを得るには、見込み顧客を対象にした模擬商談の実施がおすすめです。営業資料の現状やラフ案を用いて商品やサービスの説明を行うことで、顧客に近い属性の人々から直接意見を集めることができます。
模擬商談の大きなメリットは、通常の営業活動では得られない具体的なフィードバックが得られる点です。通常の商談では、顧客が商品の評価を口にすることはあっても、資料や商談の進め方について詳細に意見をもらう機会はあまりありません。そのため、営業資料の改善は営業担当者自身の視点に頼りがちになり、客観的な評価を得るのが難しいのが現実です。
一方で、模擬商談を通じて実際の顧客に近い視点から資料や商談の流れに対する率直な意見を得ることができ、具体的な要望が浮かび上がります。
また、こうして得られたフィードバックや課題は、社内で共有する際にも非常に役立ちます。
模擬商談の実施
次に、模擬商談の具体的な進め方について説明します。
①資料の準備
まず、既存の営業資料を揃えます。新しい商材の場合は、企画書や草案を使って進めると良いでしょう。
②見込み顧客の募集
次に、見込み顧客を探すために、スポットコンサルティングサービスなどを活用します。例えば、請求書発行システムの資料を評価してもらいたい場合は、経理部やIT部門での購買経験を持つ方を選ぶと効果的です。
③模擬商談の実施
対象者が見つかったら、1時間程度の時間を設けて模擬商談を行います。資料に沿って商品の説明を行いますが、すべての対象者に同じ条件で評価をしてもらうために、事前に録画した説明動画を活用するのがおすすめです。
その後、対象者には自由に感想を述べてもらいながら、次の点を確認します:
- 資料や説明の理解しやすさ
- 必要な情報が揃っているか
- 不要だと感じた部分
- 説明が適切な時間で行われたか
- サービス説明後の印象
これにより、顧客視点での改善点が明確になり、さらにフィードバックを基に改善の方向性をまとめます。
もし見込み顧客を見つけるのが難しい場合は、社内で商材に直接関わっていない人や知人に協力をお願いしてみてください。購買者としての視点は不足するかもしれませんが、第三者の視点でわかりやすさや魅力の伝わり方を評価してもらえます。
また、既存顧客に協力を依頼するのも有効な手段です。
商品・サービス説明のシナリオを見直す
模擬商談で得たフィードバックを踏まえ、営業資料の改善方針を検討します。ただし、すぐに資料の改訂作業に取りかかるのではなく、まずは商品の説明の流れや各セクションのボリュームを再評価することが重要です。
見直しにあたっては、商品やサービスの説明シナリオを簡易的に作成し、顧客視点を考慮しながら構成を整えていきます。
シナリオ作成の第一歩として、成績優秀な営業担当者の話し方を参考にし、その流れを文書化すると良いでしょう。こうすることで、模擬商談で得たフィードバックを反映しやすく、より完成度の高い資料作成が可能となります。
シナリオが出来上がったら、社内の複数人から意見をもらいましょう。顧客視点を重視しすぎると、重要な情報が削られ、資料全体のバランスが欠ける可能性があるため、社内レビューを通じて、顧客が知りたい情報と自社が伝えたい情報のバランスをとることが重要です。
資料の構成を再評価する
商品・サービス説明のシナリオが完成した後は、営業資料の構成を再度確認し、ラフを作成していきます。既存の資料がある場合は、シナリオに沿って以下の作業を進めましょう。
- 既存スライドの並び順を見直す
- 1つのスライドに情報が詰め込みすぎていないか確認し、必要に応じてスライドを分割する
- スライドの必要性を判断し、不要なものを削除する
- 各スライドのメッセージが的確であるか確認し、内容を精査する
- 文字量が多すぎないかを見直し、適切に削減する
- 必要に応じて新たなスライドを作成する
特に注意すべきなことは、既存スライドの情報が多すぎて、伝えたいメッセージが不明確になっていないかどうかです。
情報が多い場合は内容を複数のスライドに分け、それぞれのスライドで伝えるポイントを明確にし、順序を整理しましょう。
デザインを改善する
ラフを作成したら、次はデザインに取り掛かります。社内で簡単に体裁を整えることもできますが、プロのデザイナーに依頼することを強くおすすめします。デザイナーによる仕上がりは、資料の印象やわかりやすさに大きな違いがあります。
デザインは、企業やサービスの信用度やイメージに大きな影響を与えるため、軽視できません。デザインに投資することは、決して無駄にはならないでしょう。
デザイナーに外注する際は、依頼の仕方次第で仕上がりに大きな差が出ることを念頭に置いてください。特に、BtoB商材に関する制作経験が豊富で、PowerPointでの制作に慣れているデザイナーに依頼することが重要です。
依頼する際は、言葉だけでなく、具体的なサンプルや素案を示すことで、期待するデザインをデザイナーと共有し、すり合わせをしておきましょう。
改善後のオンボーディングプロセス
デザインが完了すれば、新しい営業資料が完成します。ここまでのプロセスを踏んできたことで、顧客にとって商材の利点がより伝わりやすい資料が出来上がっています。しかし、新しい資料を現場で活用する際には、注意が必要です。
営業資料を大幅に更新した場合、営業チームがその資料に慣れるまでには時間がかかることがあります。新しい資料に対して、以前の資料のほうが説明しやすかったという反発が起こる可能性も否定できません。慣れ親しんだ資料が変わることで、営業担当者が戸惑うのはよくあることです。
そのため、新しい営業資料をスムーズに導入してもらうために、資料の変更点や新しいポイントをしっかりと説明し、営業担当者が自信を持って資料を活用できるようにサポートすることが求められます。
まとめ:成果につながる営業資料を継続的に改善しよう
営業資料の改善は、顧客に対するアプローチを最適化し、商談の成果を高めるために欠かせないプロセスです。
資料を進化させ続けることで、商談の成功率を向上させることができます。今回紹介したプロセスを参考に、顧客の視点に立った営業資料を作成し、継続的に改善していきましょう。顧客に寄り添った資料作成が、結果として商談の成功と持続的な成長をもたらす鍵となります。
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