企業が事業展開していく上で、競争優位を築くための鍵となる概念が「KBF(Key Buying Factors)」と「KSF(Key Success Factors)」です。
これらの概念を理解し、実践に活用することで、より効果的なマーケティング戦略を構築できます。
この記事では、KBFとKSFの基本的な定義、重要性、具体的な活用方法について解説します。
目次
KBF,KSFとは
KBF:購入決定要因とは
KBF(Key Buying Factors)とは、顧客が商品やサービスを購入する際に重視する要因のことです。KBFには、価格、品質、ブランドの信頼性、アフターサービス、機能性、利便性、デザインなどが含まれます。
KBFは業界や製品、顧客の特性によって異なり、企業はこれらを詳細に理解し、対応することで顧客満足度を高め、売上を向上させることができます。
KSF:自社の成功要因とは
KSF(Key Success Factors)とは、企業が市場で成功を収めるために必要な重要な要因のことです。
KSFには、市場における競争優位性を築くための戦略、技術革新、効率的な運営体制、優れた顧客サービス、ブランドの強化、マーケティングの効果的な実施などが含まれます。
KBF、KSFを整理する意義
KBFとKSFを整理することは、企業が市場で競争力を維持し、成長を遂げるために非常に重要です。
まず、KBFを理解することで、顧客が何を求めているのか、どのような要因が購入決定に影響を与えるのかを把握できます。
そして、KSFを明確にすることで、自社がどのようにして競争優位性を確立し、持続可能な成長を実現できるかを理解することができます。自社が優れた顧客サービスを提供することが強みであるならば、その強みをさらに強化するための具体的な施策を策定することが重要です。
KSFを整理することにより、組織全体が目指すべき方向性が明確になり、戦略的な意思決定が可能となります。
<営業戦略整理の全体像と、KBF、KSF整理の流れ>
自社の売上改善の要諦を捉える
KBFやKSFを把握するためには、自社の売上がどのように構成されているかを理解する必要があります。ここでは、自社の売上改善の要諦を捉えるための手法について解説します。
売上構造を分解する
売上構造を分解することは、自社の収益源を詳細に理解し、どの製品やサービスが最も収益を上げているのかを把握するために重要です。
売上の構造は下記のように分解できます。
売上 = 客単価 × 購入回数
客単価 = サービス価格 + アップセル + クロスセル + 契約期間の延長 + 付加サービス
サービス価格=基本価格+追加オプション
このように細かく分解することで、どの要素が売上に最も影響を与えているかが明確になり、改善のインパクトが大きい要素を特定できるようになります。
そのうえで収益性の高い製品や地域にリソースを集中させることで、効率的に売上を向上できるでしょう。
自社の提供価値が高い領域を抽出する
自社の提供価値が高い領域を抽出するためには、自社製品やサービスが市場でどのような評価を受けているのかを理解する必要があります。
顧客のフィードバックや競合他社との比較を通じて、自社の強みと弱みを明確にし、提供価値が高い領域を特定します。
ターゲット顧客のセグメントを捉える
KBFやKSFを把握するためには、ターゲット顧客のセグメントを捉えることが効果的です。ここでは、そのセグメントの切り口をいくつか紹介しましょう。
売上の属性別でとらえる
ターゲット顧客をセグメント化する際には、売上の属性別に分析することが重要です。具体的な属性としては、「新規・既存の売上構成比」「業界毎の売上構成比」「従業員人数・規模の構成比」などが含まれます。
これらの要素を分析することで、どの顧客セグメントが最も収益を上げているかを把握し、リソースを効果的に配分することができます。また、各セグメントごとのニーズや購買行動を理解することで、より精度の高い販売戦略につながります。
イノベーター理論でとらえる
イノベーター理論を用いて顧客をセグメント化することで、新製品やサービスの導入時期に最適なマーケティング戦略を策定できます。顧客は以下の5つのグループに分類されます。
<イノベーター>
新しい製品やサービスを最初に採用する層。リスクを厭わず、新しいものに対する好奇心が強い。
<アーリーアダプター>
イノベーターに続いて新しい製品を採用する層。情報感度が高く、リーダー的存在。
<アーリーマジョリティ>市場の初期段階で製品を採用する層。流行に敏感で、多くの人が採用し始めると自分も購入する。
<レイトマジョリティ>市場が成熟してから製品を採用する層。周囲の人々が使用しているのを見てから慎重に購入を決定する。
<ラガード>最も遅れて製品を採用する層。新しいものに対して抵抗感が強く、最後まで古い製品を使い続ける。
プロダクトライフサイクルでとらえる
製品のライフサイクルを理解することは、各段階の顧客を把握するために重要です。プロダクトライフサイクル(PLC)を理解することで、製品の導入から成長、成熟、衰退までの各段階に応じた戦略を立案できます。
PLCは以下の4つの段階で構成されます。
<導入期>新製品が市場に投入される段階。市場認知度が低く、売上も低い。マーケティング活動が重要。
<成長期>市場での認知度が高まり、売上が急速に増加する段階。競争が激化し、製品の差別化が求められる。
<成熟期>市場が安定し、売上の増加が鈍化する段階。競争が激しくなり、価格競争やマーケットシェアの維持が重要。
<衰退期>市場が飽和し、売上が減少する段階。新製品の開発や市場からの撤退が検討される。
セグメントを顧客ピラミッドで整理する
顧客の重要性と収益性を視覚化することは、効果的なリソース配分の第一歩です。顧客ピラミッドを用いると、顧客セグメントの重要性や収益性を視覚的に把握できます。
ピラミッドの頂点には最も価値の高いロイヤル顧客が位置し、底辺には最も価値の低い未認知顧客が位置します。このピラミッド構造を利用して、顧客の優先順位を明確にし、リソースをどのセグメントに集中させるべきかを決定します。
顧客ピラミッドを活用することで、効果的にリソースを配分して収益性の高い顧客に対するサービスを強化できるので、効率的な売上向上に効果的です。
また、ピラミッドの各層に対する戦略を明確にすることで、顧客満足度を向上させ、長期的な顧客関係を築くことができます。
ターゲット顧客の解像度をあげる
KBFやKSFを把握するためには、ターゲット顧客を詳細に分析し、ニーズや行動パターンを深く理解することが重要です。
3C分析でコアコンピタンスをとらえる
3C分析(Company, Customer, Competitor)は、自社のコアコンピタンスを明確にするための重要な手法です。
この分析を通じて、自社の強み(Company)、顧客のニーズ(Customer)、競合他社の状況(Competitor)を総合的に理解し、競争優位性を築くための戦略を策定します。
3C分析を通じて得られた情報を基に、自社のコアコンピタンスを明確にし、競争優位性を築くための具体的な施策を立案することが可能となります。
顧客インタビューでKBFのデータを集める
顧客インタビューを通じてKBFのデータを収集すると、顧客が何を求めているのか、どのような要因が購入決定に影響を与えるのかが詳細に把握できます。
顧客インタビューは、直接顧客の声を聞くことができるため、非常に有効な手法です。
インタビューの際には、以下のポイントに注目します。
購入動機
顧客がなぜその製品を購入したのかを把握します。例えば、価格が安かったからなのか、品質が良かったからなのかなどを確認します。
製品評価
顧客が製品をどのように評価しているかを把握します。例えば、製品の機能やデザインに満足しているか、改善点はあるかなどを確認します。
購買体験
顧客が購入プロセスでどのような体験をしたのかを把握します。例えば、オンラインショッピングの利便性や店頭での接客対応などを確認します。
これらの情報を基に、顧客が重視するKBFを明確にし、それに基づいて自社の製品やサービスを改善することで、顧客満足度を高め、売上を向上させることができます。
自社サービスとKBFを対比させる
自社のサービスや製品の価値を最大限に引き出すためには、KBFと比較することが不可欠です。製品開発やサービス改善の方向性が定まるので、顧客のニーズに応えるための具体的な施策が実施できるようになります。
例えば、自社製品が品質面で競合他社に勝っているものの価格が高い場合、価格競争力を高めるためにコスト削減策を検討する必要があります。また、顧客がアフターサービスを重視している場合は、サービスの充実を図るための施策を実行することが重要です。
自社サービスとKBFを対比させることで、製品やサービスの強みを強化し、弱点を改善するための具体的な戦略が立てられます。
KBFをもとに、KSFを言語化する
KBFを詳細に理解したうえで、それを基にKSFを言語化することが重要です。営業資料や提案資料に反映させることで、顧客に対して効果的なプレゼンテーションが可能になります。
例えば、顧客が品質を重視している場合、その品質の高さを強調する資料を作成し、裏付けとなるデータや顧客の声を盛り込むことによって、説得力が増します。
営業資料・提案資料にアウトプットする
顧客へのアプローチを成功させるためには、営業資料や提案資料にKSFをしっかり反映させることが求められます。こうすることで、顧客に対して自社の強みを明確に伝えることができ、成約率の向上につながるからです。
顧客のKBFを理解した上での提案は、信頼を得るために重要です。これらの要素を盛り込んだ資料を作成することで、効果的なプレゼンテーションが可能となり、成約率を高めることができます。
サービスサイトにアウトプットする
オンラインでの顧客獲得を目指すためには、サービスサイトにKBFとKSFを適切に反映させることが不可欠です。顧客に自社の強みや提供価値を明確に伝えることができます。
これらの要素を取り入れたサービスサイトを構築すれば、顧客に自社の強みをしっかり伝えられるので、オンラインでの顧客獲得を促進し売上の向上を目指せます。
セールスアセットでは、このフローに沿ってKBF,KSFを整理したことで「8ヶ月で売上400%アップ」を達成することができました。
まとめ
本記事では、KBFとKSFの概要とその設定方法について解説しました。
KBFは、顧客が商品の購入を決定する際に重視する要素のことで、自社のKBFを掴んで実行していけば市場で勝ち残りやすくなります。つまり、KBFを明確にできるかどうかによって、ビジネスの成否を決めるといっても過言ではありません。
KBFを明確にするためには、自社の売上改善の要諦を捉え、ターゲット顧客のセグメントを捉えるなどして、ターゲット顧客の解像度をあげる必要があります。
そして、明確にしたKBFを基にKSFを設定し、具体的な施策に落とし込むことで、効率的に売上の改善を実現できます。
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