営業の現場では、商談の成果を左右する要素のひとつに「アイスブレイク」が挙げられます。相手との距離を縮め、会話の空気をやわらげる手法として知られており、第一印象を左右する重要なパートです。
しかし、どんな話題でも良いわけではなく、適切なタイミングと内容が求められます。なかにはアイスブレイク自体が不要とする考え方もあり、状況を見極めて使い分ける力も必要です。
本記事では、効果的なネタや避けるべき話題、営業担当者が押さえておくべきポイントまで解説します。
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目次
営業が覚えておくべきアイスブレイクとは

初対面の商談では、相手との間にある緊張感をほぐし、会話の糸口を見つけることが求められます。その際に役立つのがアイスブレイクです。ただの雑談ではなく、相手との信頼関係を築くための第一歩として機能する点が特徴です。
ただし、むやみに話しかければよいというものではなく、場に応じた内容やタイミングの見極めが重要です。
アイスブレイクの目的とメリット

営業におけるアイスブレイクには、単なる雑談以上の意味があります。相手との関係性を築く上で重要な役割を果たす要素を、3つの観点から解説します。
緊張感をほぐすことで自然なやりとりが可能になる
初対面の場や商談の冒頭では、誰もが少なからず緊張を感じるものです。その空気をやわらげる一手として、アイスブレイクが活躍します。
話しやすい雰囲気が生まれると、相手の態度にも柔らかさが加わり、やりとり全体の流れがスムーズに進みやすくなります。商談の序盤で空気が温まっていれば、続く本題にも入りやすくなり、結果的に内容の質を高めることにもつながるでしょう。
本音がこぼれる空気をつくるための導入として機能する
商談においては、顧客が本当に抱えている課題や希望を把握することが極めて重要です。
しかし、いきなり核心に迫る質問をすると、相手は構えてしまい、本心を語りづらくなります。アイスブレイクで緊張を解けば、「この人になら話してもよさそうだ」と相手が感じやすくなり、距離感が縮まります。
結果として、言葉の裏にある本音や率直な意見を引き出す土壌が整い、より深いヒアリングへとつなげやすくなります。
ヒアリングの流れについてもう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
営業ヒアリングのコツとは?ヒアリングシートの項目や役立つフレームワークも紹介
自発的に語ってもらえる状況を演出する役割もある
営業の場では、相手が受け身になると、会話が一方通行になってしまいがちですが、アイスブレイクには流れを変える力があります。
たとえば、相手の趣味や業界のちょっとした話題を振ることで、自然と話すきっかけが生まれます。話し始めることで自分のペースをつかめた相手は、徐々に主導権を持って会話に参加するようになります。
結果として、より本質的なやりとりが可能になり、信頼関係の構築にも寄与するでしょう。
アイスブレイクの鉄板ネタ「キドニタテカケシ衣食住(木戸に立てかけし衣食住)」
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営業の現場で迷わず使える話題として知られるのが、「木戸に立てかけし衣食住」という語呂合わせです。それぞれのテーマについて、実践的な使い方もあわせて紹介します。
キ:季節に関する話題
季節の移り変わりに触れる会話は、誰にとっても受け入れやすいものです。たとえば「花粉が気になりますね」や「朝晩冷え込んできましたね」といった言葉を交わすだけでも、会話の温度が和らぎます。
特別な知識がなくても話題にできる点が魅力で、時事性があるため共通認識を持ちやすく、相手との心理的な距離を自然に縮めやすくなります。
ド:道楽や趣味に関する話題
趣味にまつわる話は、相手の個性や興味を知るきっかけになります。
たとえば「最近ゴルフ行かれましたか?」と聞けば、相手が話したいと感じるスイッチが入る可能性があります。とくに共通点が見つかれば、想像以上に会話が広がることも少なくありません。
ただし、自分の趣味を一方的に語るのではなく、あくまで相手の興味に光を当てるように意識しましょう。
ニ:ニュースなどの時事に関する話題
最近話題のニュースに触れることで、相手の視野や関心の方向を知ることができます。
ただし、あくまで無難なジャンルを選ぶのが鉄則です。たとえば「今朝のニュースで見たのですが〜」といった入り方であれば、自然に話題を提供できます。天気や季節のイベント、スポーツ大会など、共感を得やすい内容に絞るのが安全です。
タ:旅行に関する話題
旅に関する会話は、思い出や体験を引き出す効果があります。「最近、どこか行かれましたか?」と尋ねるだけで、相手の表情がほころぶこともあるでしょう。
過去の旅行先や今後行ってみたい場所について語ってもらえれば、会話が盛り上がるだけでなく、相手の価値観や生活スタイルも垣間見えてきます。
テ:天気・気候に関する話題
営業現場でよく使われる導入のひとつが、天気に関する話題です。
「今日はあいにくの雨ですね」や「ようやく春らしくなってきましたね」など、自然な切り口で会話を始めやすくなります。誰もが関係しているテーマであるため、リアクションを引き出しやすく、警戒心を解く手助けにもなるのです。
短い商談時間でも活用しやすく、特に初対面の相手に対しては、有効な会話の起点として重宝されます。
カ:家族や家庭に関する話題
家族構成や家庭の雰囲気に触れると、相手の生活背景が見えてくる場合があります。
ただし、踏み込みすぎは禁物です。「お子さんはもう新学期ですか?」のように、軽いトーンで聞くことで、会話が広がりやすくなります。
相手が話しやすいと感じれば、自発的にエピソードを話してくれるかもしれません。親近感を育てるきっかけにもなり、適切に使えば信頼関係の醸成にも役立つテーマです。
ケ:健康に関する話題
体調や健康を気遣うひと言も、営業の現場では心を開いてもらうための有効なアプローチです。「最近寒暖差が激しいですが、お変わりないですか?」といった問いかけなら、違和感なく使えるでしょう。
とくに年齢層が高い相手に対しては、体調への配慮が丁寧な印象を与えるため、信頼されやすくなる傾向があります。あくまで話題のきっかけ程度にとどめ、過度な深入りは避けたほうが無難です。
シ:仕事に関する話題
相手の業務内容や最近の動きに触れることで、ビジネスパーソン同士の共通点を探ることができます。「今の時期、お忙しいですか?」のような質問であれば、相手の様子をうかがいつつ会話の糸口がつかめます。
仕事に関連する話題は、スムーズに商談の本題へとつなげやすく、聞き手の関心を引き出す手がかりとしても優れているのです。
衣:着ている服などに関する話題
身につけているアイテムにさりげなく言及することで、気負いのない対話が始まることがあります。「そのネクタイ、素敵ですね」といった言葉がけは、相手に好意的な印象を与えつつ、会話のきっかけになるのです。
ただし、あくまで自然体で伝えることが大切で、わざとらしさが出ると逆効果になるおそれがあります。外見に関する話題は、褒め方に工夫が求められる分、相手の反応を見極めながら使う配慮が必要です。
食:好きな食べ物など食に関する話題
食にまつわる会話は親しみを感じさせやすく、趣味や生活スタイルにもつながる話題です。「最近ランチで良い店を見つけたんですよ」といった形で話し始めれば、相手も気軽に乗ってくる可能性があります。
地域の名物や話題のグルメに触れると、情報交換のような流れになり、会話が弾みやすくなります。食べ物の好みから思わぬ共通点が見つかることもあり、リズミカルなやり取りが期待できるでしょう。
住:住所や出身地などに関する話題
出身地や現在の居住地に触れると、相手のルーツや親しんでいる地域に関心を示せるきっかけになります。「〇〇ご出身なんですね、旅行で行ったことがあります」といった形で話しかければ、地元ネタで盛り上がる可能性も高まります。
人は自分にゆかりのある話題に対して親しみを感じやすくなるため、距離を縮めるうえで有効なテーマのひとつです。
鉄板以外でおすすめのアイスブレイクネタ2選

定番の話題に加え、状況に応じて使い分けられるネタを持っておくと、営業の対応力が高まります。ここでは実践的な2つの話題を紹介します。
知人に関する話題
共通の知り合いに触れる会話は、初対面の壁を一気に低くする効果があります。「〇〇さんにご紹介いただいて」といった一言から始めると、相手も安心感を抱きやすくなります。
とくに紹介営業などでは、自分と相手だけの会話にならないため、客観的な安心材料としても機能します。
ただし、紹介者の名前を出すタイミングや話し方には気を配り、あくまで自然な会話の流れのなかで活用するようにしましょう。
業界の話題
顧客と同じ業界の動向や話題に触れることで、相手との知的な共通点を見つけやすくすることも可能です。
たとえば「最近、この分野で大きな動きがありましたね」と切り出せば、専門性のあるやりとりにつなげられます。相手は自分の業界について語ることで、自身の考えを整理しやすくなり、そのまま商談のヒントにつながる場合もあります。
ただし、自分の意見を述べすぎると対立の火種になりかねないため、あくまで「話題提供者」としての立場を保つことが大切です。
営業時に避けるべきアイスブレイクのネタ6選

話題の選び方を誤ると、場の雰囲気を壊したり信頼を損ねたりする恐れがあります。以下では、とくに注意が必要な話題を6つ取り上げます。
宗教・政治に関する話題
宗教や政治といったテーマは、個人の信念や思想が強く反映されるため、営業現場では扱わない方が無難です。相手との価値観が一致すれば盛り上がる可能性もありますが、反対に少しでも意見が食い違うと緊張が走り、会話が途切れてしまうおそれがあります。
どれだけ親しげに話せる状況であっても、思想的な領域に踏み込むのはリスクが高いといえます。あらかじめ避けるべき話題として意識しておくことが、安全な商談進行に直結するでしょう。
学歴の話題
出身大学や学歴に触れることは、相手のプライドやコンプレックスに関わる可能性があります。たとえば「有名校を出ていらっしゃるんですね」といった軽い一言が、相手にとっては評価や比較を含んだ言葉として受け取られるかもしれません。
逆に、相手の学歴を知らずに触れてしまうと、意図せず不快な空気を生むこともあるのです。営業の場においては、相手が話題にしない限り学歴に関連する話は出さない姿勢を徹底した方が、信頼関係を築くうえで支障が生じにくくなります。
芸能の話題
芸能ネタは一見気軽な話題に見えますが、世代や興味の違いによって共感が得られないことがあります。たとえば「最近人気の俳優をご存じですか?」という問いかけが、相手にとっては興味のない内容であれば会話が続かず、かえって気まずさを生む可能性があるのです。
また、特定の人物や作品について賛否が分かれることも多く、ちょっとした意見の相違がネガティブな印象に直結することも考えられます。営業という限られた時間のなかでは、より普遍的な話題を選ぶことが無難といえるでしょう。
調べればわかるような質問
相手の会社名や事業内容、所在地など、インターネットで簡単に調べられる情報を初対面で質問してしまうと、準備不足や関心のなさが露呈してしまいます。
「御社は何をされているんですか?」というような問いかけは、信頼を損なう典型的な例です。商談前には必ず相手企業の基本情報に目を通し、アイスブレイクであっても事前知識を踏まえた会話を心がけましょう。
愚痴・不満の話題
自分の仕事や職場環境に対する愚痴をこぼすような話題は、たとえ冗談のつもりであっても相手を不快にさせるリスクがあります。「最近、うちの部署はひどくて…」といった発言は、軽い気持ちであっても信頼性や誠実さを疑われるきっかけになりかねません。
また、共通の話題で盛り上がるような感覚で第三者の悪口を口にすれば、自分自身の人間性を疑われる要因にもなります。営業担当としての印象を損なわないためには、前向きで建設的な会話を優先すべきです。
相手のプライベートに深く踏み込む話題
家族構成や恋愛、収入といった個人的な領域に踏み込む質問は、アイスブレイクでは避けた方がよいとされています。
「お子さんはどこの学校ですか?」や「ご結婚はされていますか?」といった問いかけは、悪気がなくても相手に圧迫感や警戒心を与える恐れがあります。相手から自然に話が出た場合は別ですが、営業側から切り出すには配慮が必要です。
アイスブレイクは不要という意見もある?

営業の場面において、アイスブレイクが必須とは限らないという見方もあります。とくに忙しい相手にとっては、無駄な雑談と捉えられてしまう可能性も否めません。
相手が明確な目的を持って商談に臨んでいる場合、遠回しな導入よりも本題を早く提示した方が信頼を得やすくなることもあります。
また、表情や声のトーンといった非言語的な要素で、十分に親しみを演出できるケースもあります。状況に応じて柔軟に判断し、無理にアイスブレイクを挟まない姿勢も営業力のひとつといえるでしょう。
営業力を磨くためには、効率化も大きなポイントといえます。営業を効率化するための方法は、下記の記事をご覧ください。
営業を効率化する方法は?【即効解決!劇的に変わる7選徹底解説】
営業担当が押さえておくべきアイスブレイクのポイント4選

アイスブレイクは話題選びだけでなく、その使い方にも工夫が求められます。営業シーンで意識したい4つのポイントを順に確認していきましょう。
事前準備を怠らない
限られた時間で成果を出す営業にとって、相手の情報を事前に把握しておくことは欠かせません。とくにアイスブレイクの話題を探る際には、相手の所属部署や会社の最新ニュース、共通点になりそうな要素を事前にチェックしておくと安心です。
事前準備は相手への敬意を示す行動でもあり、信頼関係を築く土台にもなります。
アイスブレイクの要否とタイミングを見極める
どんな商談でもアイスブレイクが必要というわけではありません。たとえば、短時間の打ち合わせや、あらかじめ関係性が築かれている相手との面談では、無理に雑談を入れずに本題から入った方が好まれることもあります。
大切なのは、相手の表情や雰囲気から、話しかけるべきかどうかを見極めることです。時には沈黙を保つ方が相手に安心感を与える場合もあるため、その場に合った判断を行う柔軟性が求められます。
全員で参加できる話題を選ぶ
複数人が参加する商談では、特定の人にだけ向けた話題だと疎外感を生む可能性があるため、誰もが共通して反応できる話題を選ぶことが重要です。
たとえば天候、季節、会場の雰囲気など、当日の状況に触れた話であれば、自然に会話の輪が広がりやすくなります。全体の空気がなごめば、その後の議論も進行しやすくなり、会議自体が建設的なものになりやすいでしょう。
アイスブレイクの目的を忘れない
アイスブレイクはあくまで会話の扉を開く手段であり、目的は「話しやすい関係性をつくること」にあります。雑談が長引いてしまうと、かえって相手に時間を奪っている印象を与えかねません。
相手が話しやすくなったと感じたタイミングで、自然に本題へと移行するようにしましょう。目的を見失わず、全体の流れを意識して使うことが重要です。
まとめ
アイスブレイクは、営業活動において顧客との関係を築くきっかけとして有効ですが、使い方を誤ると逆効果になるおそれもあります。定番ネタの「木戸に立てかけし衣食住」を中心に、適した話題と避けるべきテーマを理解し、場面ごとに適切に使い分けることが求められます。
アイスブレイクを単なる雑談で終わらせず、商談の質を高める導入として活用できれば、営業力そのものの向上にもつながるでしょう。
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