インサイドセールスの成否は人材の育成にかかるところが大きいですが、比較的新しい概念であるために、人材育成に悩む企業が多いのが現実です。
本記事では、インサイドセールスの人材を育成するために有効な研修について解説します。
目次
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、電話、メール、チャット、SNS、Web会議システムなどの遠隔コミュニケーション手段を使って営業活動を行う「内勤営業」のことです。
インサイドセールスは役割や目的によってSDR(Sales Development Representative)とBDR(Business Development Representative)に分けられます。
この記事では、主に見込み顧客との初回接触から商談創出までを担当するSDRに焦点を当てた研修について解説します。
インサイドセールスの役割
インサイドセールスは、顧客と社内の双方に対して以下の役割を担っています。
- 最適な顧客体験の提供:見込み顧客が接する最初の人として、品質の高い顧客体験を提供する。
- 関係の構築:顧客と中長期的な信頼関係を構築する。
- 見込み顧客の見極め・育成:受注する可能性が高い見込み顧客を見定めてアプローチし、最適なタイミングでフィールドセールスに渡す。
これらの役割を遂行するためには、フィールドセールスと同等の自社商材の知識、顧客と信頼関係を構築するための顧客対応スキル、時間を効率的に活用するためのオペレーションスキルなど、さまざまなスキルが必要です。
インサイドセールスの役割を明確に理解することは、チーム全体のパフォーマンス向上に直結します。インサイドセールスはただ単にリードを生成するだけでなく、顧客との最初の接点として、企業全体のブランドイメージを形成する重要な役割を担っています。
このため、インサイドセールスが高いスキルを持つことは、企業全体の成功に大きく寄与します。
インサイドセールス組織に研修が求められる背景
インサイドセールスは、比較的新しい概念であり、多くの企業が十分な経験を蓄積できていないのが現状です。多くの企業が「インサイドセールスの正解がわからない」「組織のあり方が不明確で、何をしたらよいのかわからない」という課題を抱えています。
社内にノウハウがない
インサイドセールスを導入している企業の多くが経験が少なく、社内にノウハウが不足しているため、以下の問題を引き起こしています。
- リーダー層が最適解を持っていないため、適切な指導ができない:指導者自体が経験不足だと、効果的な指導が難しくなります。
- ロールプレイングやフィードバックといった1対1のOJTが中心となるため、指導する人によって教える内容が異なる:標準化されたカリキュラムがないと、指導内容にばらつきが生じます。
- チーム全体のスキルが底上げされず、成果が頭打ちになる:個々のスキルが向上しないと、チーム全体の成果も上がりません。
また、インサイドセールスの業務負荷が高いため、研修に割くリソースを確保できないケースも多く見受けられます。このような背景から、外部の専門家を活用した研修の重要性が増しています。
経験者採用が難しい
インサイドセールスは新しい職種であるがゆえに、転職市場に経験者が少なく、即戦力となる人材を採用するのが困難です。そのため、基本的には未経験者を育成する必要があります。
インサイドセールスは未経験者でも活躍しやすい職種とされており、教育の仕組みさえ整えば、将来的な組織拡大は比較的容易です。
未経験者でも活躍しやすい理由は、インサイドセールスの業務が比較的スキル習得のスピードが速く、明確な目標設定と評価基準があるためです。
このため、明確なカリキュラムを持った研修プログラムがあることで、未経験者の成長を加速させることが可能となります。
インサイドセールス研修で得られる効果
インサイドセールス研修を行うことで下記のような効果が得られます。
人材育成の効率が向上する
インサイドセールスの教育現場では、リーダー層が最適解を持っていないため、OJTに頼った育成になりがちです。OJTに偏った育成は、指導者によって身につくスキルにバラつきが出るため非効率であり、マネージャーの負担も増えてしまいます。
インサイドセールス研修では基礎知識の習得からスタートし、チーム内における知識レベルを平準化することで、その後の教育やフィードバックの理解が深まり、育成にかかる負荷も軽減されます。
研修プログラムを通じて標準化された教育を行うことで、新人教育の効率が大幅に向上し、既存社員のスキルアップにも貢献します。
さらに、定期的な研修を実施することで、最新の営業手法やツールの活用法を学ぶことができ、組織全体の競争力を維持・向上させることができます。
メンバー間・部門間での共通認識ができる
成果が出ないインサイドセールス組織では、メンバー同士や隣接部門(マーケティング部門やフィールドセールス部門)と認識合わせができていないケースが多いです。
隣接部門との共通認識がないと、インサイドセールスの介在価値を十分に発揮できません。インサイドセールス研修で基礎知識を学ぶことで、メンバー間や部門間の共通認識が形成され、良好な連携が可能になります。
特にマーケティング部門とフィールドセールス部門との連携は重要です。インサイドセールスの役割は、マーケティングが獲得したリードを育成し、商談できる形にしてフィールドセールスに渡すことです。
これを実現するためには、各部門が共通の目標と評価基準を持ち、一貫したアプローチを行う必要があります。
インサイドセールス研修で注力すべき内容
インサイドセールス研修で注力すべき内容としては、以下のことがあります。
- 基礎知識
- 自社商材の知識
- 顧客対応スキル
- 見込み顧客への理解
- 顧客を知る方法
- 顧客を見極める方法
それぞれ詳しく解説します。
基礎知識
基礎知識を学ぶことで、共通認識の形成と研修の理解促進が可能になります。インサイドセールス立ち上げ時やメンバーの入社・異動時に全員が受講できるようにしましょう。基礎知識には以下の内容が含まれます。
- インサイドセールスとは何か
- ターゲットの定義
- リードの管理と評価方法
- 対応プロセス
- ヒアリング項目
- 応酬話法
- アプローチのルールと優先順位づけ
- 設定すべきKPI
- マインドセット
基礎知識の理解は、組織全体の効率的な運営に不可欠です。特にインサイドセールスが担うべき具体的な役割と目標を明確にすることで、メンバー一人一人が自分の業務の重要性を理解し、積極的に取り組むことができます。
自社商材の知識
インサイドセールスもフィールドセールスと同様に、自社商材に関する深い知識を身につける必要があります。商材の概要、自社を取り巻く外部環境、顧客への提供価値を学びましょう。特に提供価値の訴求は商談創出のために重要です。
自社商材の知識は、顧客とのコミュニケーションを円滑にし、信頼関係を築くために欠かせません。定期的な製品研修やアップデート情報の共有を通じて、最新の知識を維持することが重要です。これにより、顧客に対して的確かつ効果的な提案ができるようになります。
顧客対応スキル
インサイドセールスは顧客の状況や課題に合わせて最適な提案をする必要があります。以下のスキルを研修で学び、その後に実践・フィードバックを通じて強化しましょう。
- コミュニケーションスキル:ペーシングやSPIN話法などのコミュニケーションおよび傾聴スキル。
- オペレーションスキル:MAやSFA、Web会議システムなどのツール操作や活用スキル。
- 仮説構築力:顧客企業のビジネスについて情報収集を行い、課題について仮説を立てるスキル。
顧客対応スキルは、顧客との信頼関係を築くための基礎です。特に、顧客の課題を的確に把握し、それに対して適切なソリューションを提供する能力は、インサイドセールスの成功に直結します。ロールプレイングや実際の顧客対応を通じて、これらのスキルを磨いていきましょう。
顧客を知る方法
見込み顧客について調査する方法は以下の通りです。
- IRを確認する
- インタビュー記事、寄稿記事、出版物などを読む
- 直近1年のプレスリリースを見る
- 直近1年のニュース記事を見る
- 社長や役員、担当者のSNSの発言内容を見る
- 自社の資料ダウンロードやセミナー参加状況を確認する
- Web上の行動データを調べる
これらの情報を収集することで、顧客企業のビジネスモデル、戦略、現在の課題などを把握し、より的確なアプローチが可能になります。顧客のニーズや課題に合わせた提案を行うことで、信頼関係を築きやすくなります。
顧客を見極める方法
リードの見極めについては、何をもってホットリードとするのかを定義することから始めます。商談化しやすい顧客の条件を以下のように定義します。
- BANT情報をすべてヒアリングできた
- 年間売上が○○円以上
- 予算が○○円以上
- 決裁者である
見極めたリードに対しては、適切なタイミングでアプローチし、商談につなげることが重要です。顧客のニーズや予算、導入時期を把握し、それに合わせた提案を行うことで、商談の成立確率を高めることができます。
インサイドセールス研修を社内で行うか、外部に依頼するか
インサイドセールスの研修を社内で実施するか、外部に依頼するかを決める基準と方法について解説します。
組織の課題を分析する
まずは、インサイドセールス組織の課題を整理します。立ち上げからの経過期間や現状の成果、メンバーの育成状況、教育施策を整理したうえで、課題とその原因を分析しましょう。
社内にノウハウが不足している場合や研修に割くリソースがない場合は、外部研修が適しています。
社内研修と外部研修のメリット・デメリットを把握する
社内研修と外部研修のメリット・デメリットを整理します。以下の表では、内容、費用、リソース、客観性の4つの観点でそれぞれの特徴を比較しています。
観点 | 社内研修 | 外部研修 |
---|---|---|
内容 | 社内事情に即した内容 | 専門知識と体系的なノウハウ |
費用 | 低コスト | 費用がかかる |
リソース | 社内のリソースが必要 | 外部のリソースを活用 |
客観性 | 主観的になりやすい | 客観的な視点を提供 |
社内研修は、社内の状況や文化に即したカスタマイズが可能ですが、ノウハウやリソースの不足が課題となります。
一方、外部研修は、専門的な知識や経験を持つ講師による指導が受けられますが、費用がかかり、社内の状況に完全には適合しない場合もあります。
研修先を比較検討する
外部研修の依頼先は以下のポイントで比較検討しましょう。
- 講師に豊富な実務経験があるか
- 業界、競合、自社の営業スタイルへの理解があるか
- プログラムにカスタマイズ性があるか
- 研修後のサポートがあるか
外部研修を利用する最大のメリットは、専門知識や経験に基づく体系的なノウハウを得られることです。講師の経験や力量によって内容や質が大きく左右されるため、専門性と実績は重要ポイントです。事例記事や他社の評価を参考にしながら、最適な研修先を選びましょう。
まとめ
インサイドセールスは、企業の営業活動において重要な役割を担っています。しかし、ノウハウが不足していることや経験者の採用が難しいことから、効果的な人材育成が求められます。
インサイドセールス研修を通じて、基礎知識、自社商材の知識、顧客対応スキル、見込み顧客への理解を深めることで、組織全体のスキルを底上げし、成果を最大化することができます。
社内研修と外部研修のメリット・デメリットを理解し、最適な方法で研修を実施することが成功の鍵となるでしょう。
最終的には、インサイドセールスの役割を理解し、組織全体での共通認識を持つことが重要です。
研修を通じて、インサイドセールスの基本的な知識とスキルを身につけるだけでなく、実践を通じて継続的に学び続ける姿勢が求められます。こうした取り組みでインサイドセールスのパフォーマンスを向上させ、企業全体の成長に寄与することができるでしょう。
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