タッチポイントとは?意味・種類・設計・強化方法を徹底解説

顧客体験(CX)や売上、ブランド価値の最大化を実現するために、タッチポイントの設計と最適化は欠かせません。
企業と顧客が関わるすべての瞬間がタッチポイントであり、それらは単なる接触機会ではなく、感情や印象、行動のきっかけを生む重要なポイントです。
本記事では、タッチポイントの基本的な意味から、設計の手順、フェーズ別の戦略、そして強化の実践ポイントまで、体系的かつ具体的に解説していきます。
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目次
タッチポイントとは?意味と定義

顧客接点を理解することで、戦略的なマーケティング活動の第一歩を踏み出せます。
ここでは基本概念と混同されがちな用語を整理します。
タッチポイントの定義と意義
タッチポイントとは、企業やブランドが顧客と関わるすべての接点です。これは単に「物理的に会う機会」だけではなく、広告を目にする、SNSの投稿に触れる、メールマガジンを受け取るといったすべての体験が該当します。
企業がコントロール可能なものもあれば、口コミやSNS投稿のように間接的な影響を与える接点も含まれます。特に近年は、顧客側が情報の発信者となるケースも増えており、企業はそれらの接点すらも戦略に取り込む必要があるでしょう。
タッチポイントの価値は、「接触したこと」そのものではなく、「どんな体験を与えたか」にあります。印象の良し悪しや情報の伝わり方がその後の行動に強く影響するため、質的な設計が非常に重要です。
チャネルとの違い
「チャネル」はマーケティングにおける情報伝達の“手段”であり、タッチポイントはそのチャネルを通じて生まれる“体験”です。たとえば、Instagram広告というチャネルを通じて、顧客が商品に興味を持った瞬間がタッチポイントです。
この違いを正しく理解しないと、どのチャネルを使えばよいかだけに意識が集中し、そのチャネルで顧客にどんな印象を与えるべきかという最も重要な部分が抜け落ちます。
さらに、タッチポイントには「何を伝えるか」「どう感じてもらうか」が含まれるため、同じチャネルでもコンテンツの質や見せ方によってその価値は大きく変動します。
オンライン/オフラインの具体例
オフラインタッチポイントの例としては、店舗での接客、展示会、紙媒体のカタログやチラシ、テレビCM、新聞広告などが挙げられます。これらは顧客との直接的なコミュニケーションができる反面、データとしての蓄積や即時分析には向いていません。
一方、オンラインのタッチポイントには、Webサイト、LP、SNS、アプリ、ウェビナー、メール、YouTubeなどがあります。オンラインの利点は、リアルタイムでデータが取得でき、A/Bテストやパーソナライズも容易な点です。
企業はこれらの接点を顧客のフェーズや属性に応じて適切に設計することで、より精緻なマーケティングを展開できます。
なぜ今タッチポイントが重要なのか

マーケティングの現場では、なぜここまでタッチポイントの設計が注目されているのでしょうか。背景には、顧客行動の変化と競争環境の激化があります。
顧客行動の多様化とカスタマージャーニーの複雑化
かつての購買行動はテレビCMや店舗を経て購入するシンプルな流れでしたが、現在ではSNS、口コミ、比較サイト、EC、リアル店舗などを行き来しながら、複数のチャネルで情報を収集・検討し、購入に至ります。
その結果、カスタマージャーニーが複雑化し、各接点での体験が顧客の購買意欲やブランド評価に大きく影響を与えるようになっています。
このため、企業はどのようなタッチポイントをどの段階で設けるかを戦略的に考える必要があるのです。
ブランド認知・ロイヤリティの醸成
顧客はタッチポイントを通じて企業の姿勢や価値観を感じ取ります。たとえば、カスタマーサポートでの対応品質が高ければ、企業全体に対する信頼感が高まり、結果的に再購入やファン化につながります。
また、ブランドロイヤリティの高い顧客は、競合と比較しても価格や条件に左右されにくくなるため、企業にとって非常に価値の高い存在です。
ロイヤリティの醸成には、単にプロモーションを行うだけでなく、各接点での一貫した体験設計が求められます。
LTVとリピート率の向上
新規顧客の獲得には5倍のコストがかかるとされており、既存顧客の維持がいかに重要かは言うまでもありません。そこで重要となるのが購入後のタッチポイントです。
たとえば、購入後のメールフォローや、ユーザーの利用傾向に合わせたアプリ通知などは、適切に行えばリピート率を大きく向上させます。
とくに、サブスクリプションモデルにおいてはオンボーディングと継続的な体験の提供が解約率を左右します。
タッチポイント設計のステップ

戦略的にタッチポイントを設計するためには、順を追って考えるべき明確なプロセスがあります。
ここでは具体的な5つのステップに分けて解説します。
ステップ1|ブランドメッセージ・世界観の定義
設計の起点となるのは、自社はどのように見られたいのかというブランドの世界観の言語化です。ブランドのミッションやビジョン、提供価値を明文化し、それを全ての接点で統一して表現する必要があります。
たとえば、「誠実」「先進性」「親しみやすさ」などの価値観があるならば、店舗スタッフの言葉遣い、Webサイトの色合い、SNSのトーンまで、それらに整合性を持たせなければなりません。
顧客はタッチポイントごとに感じる一貫性からブランドへの信頼感を高めていきます。逆に、バラバラの印象を与えてしまうと、混乱や不信感につながるため注意が必要です。
ステップ2|ペルソナとカスタマージャーニーの設計
設計の次のステップは、誰に向けて接点を設けるか、つまりペルソナの定義です。年齢、職業、生活スタイル、価値観、課題などを具体的に設定することで、顧客の行動・心理を深く理解することができます。
次にそのペルソナが、どのような行動経路で商品やサービスを認知し、興味を持ち、検討し、購入に至り、再利用に至るかを可視化したカスタマージャーニーマップを作成します。
このマップがあることで、どのフェーズで、どのタッチポイントが必要か、どのポイントが抜け落ちているかといった設計上の欠陥が明確になるでしょう。
近年では「EmotionJourney(感情の波)」も併記する手法が増えており、体験設計に役立ちます。
カスタマージャーニーマップについてもう少し詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
カスタマージャーニーマップの作り方と成功させるためのポイント
ステップ3|各タッチポイントの目的・役割とKPI設計
それぞれのタッチポイントには、目的と役割を持たせることが重要です。たとえば、認知フェーズの広告なら「見てもらうこと」が目的、比較フェーズのFAQなら「不安解消」が目的となります。
そしてそれぞれにKPIを設定します。SNS投稿ではエンゲージメント率、広告ではCTRやCPM、ECサイトではCVRや離脱率、サポートではNPSやCSATなど、接点ごとの目標指標を定めておきましょう。
KPIがあることで、設計→運用→改善というPDCAサイクルが回しやすくなり、効果のある接点、改善すべき接点が見える化されます。
また、ツール面でもCDP(カスタマーデータプラットフォーム)やGoogleアナリティクス4、MA(マーケティングオートメーション)との連携が効果を最大化させるでしょう。
失敗しやすいタッチポイント設計の落とし穴とは?

設計や運用を誤ると、かえって顧客離れやブランド毀損を招くケースもあります。
ここでは、実務でよくある失敗例やその原因、改善策について解説します。
目的が不明瞭なまま接点を量産してしまう
多くの企業がやりがちな失敗として「とりあえずWeb広告やSNSを増やす」アプローチがあります。
しかし、接点を増やすことが目的化してしまうと、顧客は混乱し、結局何も伝わらないという結果になります。すべてのタッチポイントには、意図とKPIが必要です。
部署間連携が取れず、体験が分断されてしまう
マーケ部門と営業部門、カスタマーサポート部門などが連携しないまま、個別最適でタッチポイントを設計すると、顧客は「部門ごとに違う顔を持つ企業」に違和感を覚えます。
一貫したブランド体験のためには、横断的なガイドラインと情報共有が不可欠です。
パーソナライズ不足により、情報が刺さらない
顧客属性や関心を無視した一斉送信型のコンテンツ配信では、コンバージョンにつながらないばかりか、ブランドへの不満や離脱も引き起こします。
MAツールやCDPなどを活用し、セグメント別に体験を最適化する視点が求められます。
フェーズ別タッチポイント戦略

ここでは顧客の購買フェーズに応じた代表的なタッチポイントを整理します。それぞれのタイミングで適切な接点を、適切な手段で設けることが成果に直結します。
認知フェーズ
ターゲットにブランドや商品を“知ってもらう”段階では、広く拡散できるチャネルとコンテンツが求められます。SNS広告、YouTube動画、インフルエンサー施策、Web広告などが有効です。
ここでは、視覚的に強い印象を残す、メッセージが明快であることが重要といえます。動画では冒頭3秒の訴求、静止画広告なら強力なキャッチコピーとビジュアルが重要です。テレビCMや看板などマス施策も一定の効果があります。
興味・関心フェーズ
ユーザーがブランドを認識した後、興味を持ってさらに情報を求める段階です。セミナー・ホワイトペーパー・Webメディアの記事・製品比較表などが有効です。
この段階では、解決できる課題が明確に伝わること、競合との差別化ポイントが可視化されていることが求められます。ユーザーは“調べるモード”に入っているため、質の高い情報提供が信頼構築に直結します。
比較・検討フェーズ
複数社を並べて比較するフェーズでは、機能比較表、導入事例、FAQ、デモ動画、試用版提供など、具体的なベネフィット訴求が重要です。
「この商品は自分の課題にどうフィットするか?」「価格に見合った価値があるのか?」という疑問に対して、具体と実証で答えるコンテンツ設計が求められます。営業部門と連携し、オンライン・オフラインで一貫性ある情報提供が理想です。
購入・契約フェーズ
CV率を最大化するには、購入画面のUI/UX、エラー表示、決済の選択肢、オファーの訴求内容が肝です。1クリック決済、分割払い、購入前の電話相談などが、意思決定の後押しとなります。
ここでの離脱は非常にもったいないため、想定される障壁を極限まで排除することが求められます。
たとえば、送料が不明、返品ルールが複雑、ボタンが分かりにくいなどの小さな要素が、大きな機会損失となるため、徹底した改善が必須です。
継続・リテンションフェーズ
商品を買ってもらった後こそが本当のスタートです。満足度を高め、再購入・継続利用につなげるには、サポート体制・顧客コミュニティ・利用ガイド・メールマガジンなど、さまざまなタッチポイントが必要です。
ユーザーが悩む前に情報を届け、困ったときにすぐ解決できる環境を整えることで、自然とファン化が進みます。NPS(推奨度)を上げるためにも、日常的なコミュニケーションの設計は欠かせません。
タッチポイントを強化する3つの実践ポイント

単に設計して終わりではなく、継続的に改善しながら強化し続けることが重要です。
ここでは、タッチポイントを強化する3つの実践ポイントを解説します。
1.顧客データの一元管理と可視化
CDP(Customer Data Platform)やCRMツールを活用し、各接点で得られたデータを一元管理・分析できるようにしましょう。これにより、どの接点が成果を上げているのか、どこで離脱しているのかが明確になります。
さらに、顧客ごとに「どの接点を経由して購入に至ったか」「どのコンテンツが効果的だったか」といった詳細な分析も可能になります。
顧客管理についてもう少し詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
顧客管理の方法とは?基本からツールの選び方まで徹底解説
2.UI/UXとパーソナライズの徹底
Webサイトやアプリ、メールのUI/UXを定期的に改善し、顧客属性や行動に合わせたパーソナライズを実現することで、接点ごとの体験価値が大きく向上します。
パーソナライズが進んだ顧客は、LTVも高く、エンゲージメントも継続しやすくなります。
3.クロスチャネル施策と一貫性の保持
オンラインとオフライン、複数チャネルを横断したタッチポイント設計を行い、ユーザーがどの接点でも違和感なくスムーズに体験できるようにしましょう。
一貫性のあるブランドトーンを維持することが信頼形成につながります。
まとめ
タッチポイントとは、顧客の行動や感情を大きく左右する企業と顧客のあらゆる接点です。接触の瞬間に、価値を届けるか、失望させるか、その違いが企業の成長を左右します。
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